やっぱりバレてる。

昨日の定時後、共に作業をし、

さいきんでは飲みに行ったりもする、

29歳男子が近寄って来て訊いた。

「彼女と仲直りしたんですか?」


か、彼女って。


誤解なきよう。


そもそもぼくのボキャブラリーのなかに、

恋人やガールフレンドを指す呼び名として、

「彼女」というワードは存在しない。

飽くまでも英語で云う”she”としての代名詞でしかない。


だから彼が放った「彼女」が、

職場でいちばん仲が良い、

そして就業初日にひと目惚れした女の子のことであることは、

云うまでもなく、容易に理解した。


「親しく話しているじゃないですか」

自他共にドSキャラが定着している彼が不敵に笑う。


畳み掛けるように、

そばで聞いていた25歳男子も口を挟む。

「口を聞いてくれないって落ち込んでいたじゃないですか」

ふだんは大人しいのに根はパンクな彼が微笑む。


ここまでの経緯は、

改めて詳しく書こう。


ほんとうに大雑把にまとめておくと。


初対面でひと目惚れ、

というところから書いたら、

簡単にはまとまらなそうなので、

ここさいきんのことだけ。


自分で書くのは恥ずかしいのだけれど、

職場でぼくと彼女は、

同僚や社員、老若男女から

「仲が良いよね」と云われているんだと思う。


それが徐々に壁ができてきたと云うか、

距離が生まれてしまった。


具体的には、

毎朝「おはよう!」と声を掛けてくれなくなり、

こちらから「おはよう」と云っても、

「おはようございます」と素っ気ない。


次第に無言でスルーなんてことさえあった。


これは、いろいろな意味でショックだった。


ひとつは、半年くらいまえ、

他の女の子から同じような仕打ちを受けていたから。


そのとき相談をしたり、

アドヴァイスを受けていたのが、

まさに彼女だったから。


もうひとつは、彼女はそんな女の子ではないから。


挨拶はもとより、

誰にだって分け隔てなく

明るく元気に接してくれる娘だったから。


他人を無視したり、

冷たくあしらったりするようなひとじゃないから。