しあわせすぎてこわすぎる。【第一話】

朝から素敵な予感がした。


「おはよう」と話し掛けたら笑顔。

今日のポジションについて。

「あの場所好きなんです」と。

「どうして?」と訊いたら。


「だって、すぐお手伝いに行けるじゃないですか」って!


思わずアタマを撫で撫でしたくなった。

思い切り抱きしめたかった。


もちろん、たくさんの同僚のいるまえで

そんなことができるはずはない。


だからこっそり、

休憩に行ってる隙に、

作業のフォローをしておいた。


以前は、これみよがしにしてたんだよね。


「ほら、ぼくはきみのおてつだいをしてるよ」って。


もちろん喜んでくれたけれど、

それはぼくを傷つけまいと考えたうえでの、

思いやりや優しさから。

ほんとうは感謝なんてしてなかったんだよね?


あるとき、一切を受け入れてもらえなくなって、

ようやくそこでぼくは気付いた。


それで、しばらく距離を置いたら、

ようやく傷が癒えたのか、

時間が解決してくれたのか、

すこしずつ、また話せるようになって。


そのまえに、ぼくは、仕事の話にかこつけて呼び止めたんだ。


ひと通り解決したとき、

あれほど拒絶されていたのに、

いとも簡単に話すことができたから、

つい欲が出て、ぼくはほんとうのことを話した。


そうしたら、ほんとうのことを話してくれたんだよね。


やっとわかったよ。


40歳を過ぎたおじさんが、

娘ほどの女の子に振り回されるなんてね。


笑顔がかわいい。

笑顔を見せてくれなくなった。


ぜんぶ、ぼくのせいだった。


また、笑顔を見せてくれるようになった。

やっぱり、笑顔がかわいい。


好きだなって思う。

その「好きだよ」ってキモチは、

あのころとはちがうんだよって、

いまなら云えるよ。